広く 暗く 深い 深い 夜の 海。
僕は 泳ぎ疲れてしまった。
もう カラダは 傷だらけだ。
だから 決めたんだ。この群れから すこしのあいだ はなれてみようって。

僕は ひとり 陽のあたる水面めざして 泳いでいった。

振り返ると 仲間は 僕の背後に どんどん 小さくなっていって やがて 見えなくなった。
僕を 呼び戻す声が 聴こえた気がしたけれど 僕には もう 届かなかった。

水面に カラダを プカリと浮かせて 只 波に身を任せて 漂ってみた。
ひとりになって いろんなことを 考えた。

僕が この海を 泳ぐ 理由。
僕が 泳ぎ続ける その 意味。
僕にとって 何が 大切なものなのか。
そして 君のことも すこしは 思い出した。

気が付いたら 僕は ずいぶん遠くまで 流されてしまっていた。
もう 帰れない。

太陽が 僕の鱗を 焦がし始めたので
僕は漂うのをやめて 泳ぎはじめなければならなかった。

考えていたことの答えは 結局 みつからないままだ。
理由や 意味なんて 考えることさえ 無駄なのかもしれない。
僕が大切にしていたものは そんなに大切なものじゃなかったのかもしれない。
ひとつだけ判ったことは この大きな海が やっぱり すきなんだ ってこと。

戻ってきた海底には 仲間もいなくて ひとりぼっちだけれど
僕は なんとなく この先も 独りで泳ぎつづけていくんだ という気がする。

僕の泳ぎ方は下手っぴで 『まるで 溺れてるみたいだね』 って よく 君に笑われたけれど
この潮に流されるままでも ただ漂うようにでも 僕は僕なりに この海を 泳ぎ切ってみよう と おもう。

DON'T LOOK BACK