僕は ナイフを手に入れた。ピカピカ光って 鋭くとんがって 切れ味もイイ。
ずっと こんなカッコいいナイフが 欲しかったんだ。
コイツを手に入れたのには 訳があるんだ。
もう 僕は コレを手にせずにはいられなかった。
云っとくけど 誰かを傷つけるためじゃない。断じて違う。
もしも ナイフを持って立っている僕をみて 君が厭なキモチになったのなら それはひどく申し訳ない。
驚かせたり怖がらせたりするつもりは 無いんだ。
この刃先は けして君には向けないから 安心していてほしい。
寧ろ 刃先は 常に僕に向けられているんだ。

僕は もう なんにも信じられない気分だった。
なにもかも消えてしまえばいい と 思った。
自分自身さえも。
だから 僕は 僕を殺すために これを手にいれた。
手首に ひんやりと つめたい ナイフ。
思い切り チカラを込めて それを引けば ちょっと痩せ過ぎの僕の細い手首は 簡単に切り裂けただろう。

でも その瞬間・・・

君のこと 思い出した。

これは 僕にも意外なことだった。びっくりした。
だって 彼女でも アイツでもなく 君 だったんだからね。
絶望の淵でみたものは 君の泣き顔だった。

僕が消えちゃったら 君が悲しむってこと 思い出したんだ。
君が いてくれて よかった。
僕は 君に 救われた。
君が 此の世にいる限り 僕も 生き続けよう。

僕等は曖昧で 未来は混沌としていて 僕は また 道に迷うかもしれない。
ふたたび すべてが 虚しくなるかもしれない。
けれど もうすこし 僕は 此処で 頑張って 生きてみようと思う。
君は 其処で 僕を 見守って居てほしい。

このナイフは 僕を切り刻むため ではなく
未来を切り拓くために つかうことにしよう。

LIFE IS COMIN'BACK