初恋は 実らないらしいけれど 僕の初恋は あっけなく 終わりを迎えた。
理由は 僕等にしか わからないことなんだ。僕等には なんとなく それが わかっているけれど それを うまく 説明することは 難しい。
ちいさな躓きや ちょっとしたすれ違いを 乗り越えられなかったのは 愛が 足りなかったのかもしれない。
僕が 若すぎたせいかもしれない。年上の彼女には 僕は ずいぶん 幼く 映っていたことだろう。
たくさん 我儘を 訊いて貰った。意地ばかり 張っていた。やさしくなれば 良かった。素直になれば 良かった。僕が いけなかったんだ。
あの別れは めちゃくちゃ 辛かった。胸が 痛かった。

僕の胸は 今では もう 痛まない。あのころのことを なつかしく やさしく 思い返せるようになった。
彼女のこと 本当に 大好きだった。
彼女は 眼鏡が似合わないって 気にしていたけれど 僕は とても 可愛らしいと思っていた。
いまでも 眼鏡をかけた女のひとがだいすきなのは きっと 彼女の影響だ。
眼鏡の奥の綺麗な茶色い瞳。長い睫毛。サラサラの髪。ちいさな胸。ぜんぶ 可愛かった。
彼女は ときどき面白いことを喋るし 物の見方が鋭いし ちょっと哲学的なことを云ったりするから すごく 尊敬していた。
外見も 内面も 素晴らしく 僕の理想にぴったりの人だった。
あれから たくさん恋をしたけれど だれも 彼女には かなわない。
とりわけ いちばん素敵なところ 僕がとってもお気に入りだったのは
彼女の 声。

低くて ハスキーで 個性的な 色っぽい声。BARBEE BOYSの杏子に 似ていた。

彼女と 別れてから 僕は BARBEE BOYSのCDを 全タイトル 揃えてしまった。
映画観ても テレビ見ても 本読んでも 食事してても 誰かに会ってても 不意に 涙が零れた あの さみしかった日々。
やるせない 独りの夜 彼女の声が 聴きたくなった。けれど もう 電話は 出来なかった。
電話をする代わりに CDをかけた。来る日も来る日も BARBEE BOYSを 聴いた。
聴きながら 彼女のこと ずっと 考えてた。
好きっていう気持ちだけじゃ 繋ぎとめておけないって 気が付いた。僕は まだまだ 子供だ。彼女を 幸せには 出来ない。
失恋のうたを聴いては 泣いた。
『泣いたままでlisten to me』 『女ぎつね on the Run』 『ごめんなさい』 『もォやだ!』 『chibi』 『もうだいじょうぶ ヒステリー』
『ショート寸前』 『ノーマジーン』 『三日月の憂鬱』 『静けさに』 『おやすみ よそもの』 『打ち上げ花火』 『ナイーヴ』 『ダメージ』 ・・・
嵌りすぎて やばいくらいだった。
あの頃 音楽だけが 僕を 支えていた。

あの痛みから どうやって 立ち直ったのか あんまり昔のことで 思い出せないのだけれど
BARBEE BOYSを聴く度に 彼女のこと 痛いほど 想い出せる。素敵だった彼女。完璧な恋人。

今日 部屋を 掃除していたら 棚の奥で埃をかぶっているCDを 見つけたんだ。懐かしいな。
CDをセットして プレイボタンを 押す。彼女の 声が 聴こえた気がした。
僕は 何度も 何度も リプレイする。何度だって 再生する。

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