君からの 手紙を読んで 泣いたことが ある。
いつだったか 君の好きな ロックバンドの うたを 書いて 送ってくれた あの 手紙だ。

僕は そのバンドを知らなかったし その曲を聴いたことも無かったけれど
歌詞を読んだとき あまりのせつなさに 涙が止まらなかった。
喫茶店の片隅で 人目も気にせず ぽろぽろ 泣いた。

”ひとりぼっちで やがて 滅びてゆく” って うたってる アレだよ。(タイトルは わすれた。何だっけ?)
君は 『いまのあたしはこんなきもちなの。』って 書いていたけれど それが 悲しかった。

或る日 君を 家まで送っていったら コーヒーを淹れてくれたことが あったね。
ちょうど ラジオから流れてきたのが あの曲 だった。
(僕は すぐに 気付いたよ。君の手紙を 何度も読み返して すっかり 歌詞を 暗誦していたからね。)

あの時・・・ 僕等に ながい沈黙が 訪れた あのとき
実は 僕は あのせつなさが 甦って 泣き出しそうに なってしまっていたんだ。
君に 涙を見せるわけにはいかないから 必死で堪えたけれど。

君は 『かなしいきもちになっちゃうね。』 と云って ラジオを消して さみしそうに 微笑った。

僕は 只 押し黙っていたけれど なにか 君に云うべきだったと 今では 思う。
君の 孤独を埋める なにか ひとこと。
でも あの時は なにも 思いつかなかったんだ。
もっと 僕が うまく喋れていたならば 今とはちがう未来も あったかもしれない。
或いは 君を抱き寄せて その長くて茶色い髪を 優しく撫でたら 良かったのかもしれない。
僕は 駄目な男だ。君を 慰める 術を 知らなかった。

こないだ 街で 君を 見かけた。
僕のしらない男と 手をつないで 歩いていた。
君は 幸せそうに 笑っていた。
すごく 仲が良さそうで お似合いで 僕は 声を掛けそびれた。

もう 君が孤独じゃないのなら それは 僕にとっても うれしいことだ。
僕は 安堵した。君に恋人が出来たこと こころから 喜んでる。

なのに 何故だろう。僕の涙は 未だ 乾かないんだ。

I CAN'T PAT YOU ON THE BACK