2003/01/01 (Wed)
 
お煮しめ。数の子。松前漬け。かまぼこ。伊達巻。お雑煮。
生ハムとモッツァレラチーズのぐるぐる巻いたもの。テリーヌ。
わたしと妹たちは スパークリングワイン。
いつもの BALLATORE という名前の 安くて飲みやすくておいしいワイン。
父親は日本酒で 母親はジンジャーエールで 乾杯をする。

元旦には お赤飯を食べるのだけれど 今年のものは ちょっと変わっていた。
このごろこの家で流行っている 黒米がブレンドされていたので 見たことも無いような色になっていた。

公務員をしている妹は お金持ちなので 毎年 家族全員に お年玉をくれる。
ピンク色の和紙に包まれた1万円札が配られて みんな ありがたく いただく。

テレビを 観た。爆笑問題が 出ていた。
新ネタというのをみたけれど さっぱり毒が足りない気がした。
さまぁ〜ずが 意外にも 笑えた。たくさん 笑った。

新聞に載っていた 新潮社新年広告を じっくりと 読む。
江國香織の 書き下ろし小説。
お買い物をするシーンが おもしろかった。とても。

夕方は 妹たちと 車に乗って ショッピングセンターへ。
カートを押す係を 引き受けた。
牛乳や パスタソースの缶詰や 杏露酒の瓶が かごのなかに 入れられる。
杏露酒には おまけが付いていた。ちいさな 中国陶器。
それは 蝶々の柄で わたしが貰えることになった。
お金持ちの妹は 当然のように お金を払う係だった。
2003/01/02 (Thu)
 
お餅は あんまり すきじゃない。
ほかの家族の朝ごはんは お餅だったらしいのだけれど わたしは パンをたべた。
フジパンの ネオバターロールを ふたつ。
オーブントースターで温めると なかのマーガリンが とろ〜りと溶けた。
コーンスープには パセリをたくさん入れた。
目玉焼きと ウインナーも たべた。
いかにも 朝ごはん というかんじだったけれど もう 陽はすっかり高く昇っている時間だった。
テレビでは 箱根駅伝のゴールシーンが流れていた。

深夜に降った雪は あらかた融けて 建物の北側に 僅かに残っているだけだった。
踏みしめると きゅんきゅんと 音がした。
触ると かんたんに きえてしまった。
やわらかくて 淡い 雪。

だらだらと テレビを 観ていた。さんまとか。
深田恭子ちゃんが とても 可愛らしかった。
やわらかそうで ぷにぷにしている女の子って すき。
2003/01/05 (Sun)
 
赤レンガ倉庫の chano-ma で ごはんを たべた。
客席は 椅子席と小上がりがあって わたしたちは 小上がりを選んだ。
そこは 客席というよりは ベッドに近かった。
しろい ひろい マットレスのうえに 靴を脱いで あがる。
みどりや えんじ色の クッション。こげ茶いろの ひざ掛け。
人気メニューの はすのハンバーグは まだお昼どきだというのに すでに売り切れだった。
マットレスに直に置かれた木のお盆のうえに つぎつぎと料理がやってきた。
わたしたちは それを ほとんど平らげた。
おなかいっぱいになったら とても眠くなってしまって ひざ掛けに包まるようにして 目を閉じた。
そのまま そこで お昼寝をしたい気分になった。
そこは まるで ベッドみたいだった。
2003/01/09 (Thu)
 
電車のなかで 不意に涙がこぼれた。
両耳に捻じ込まれたイヤホンから wyolicaの歌声が流れていたからかもしれない。
2両目のはじっこの座席にふかく腰掛けて 窓の外をみながら すこしだけ泣いた。
(なにが かなしかったんだろう?)

電車が終点のホームに滑り込むあいだに 立ち上がって 1両目の先頭まで あるいた。
ドアがひらいた瞬間から 改札までは 走っていった。
(なにかを思い出しかけて すぐに忘れた)

モスバーガーでは 喫煙席に座ってみた。
右隣のおんなのひとは セーラムライト。
ケータイで 誰かと喋っていた。
本屋さんのカバーのかかった 文庫本を読んでいた。
左隣のおんなのひとは モスに置いてある雑誌をみていた。
雑誌を取りにいったら クロワッサンとPOPEYEしか無くて しかたなく POPEYEを手に取った。
お部屋特集で すてきなお部屋がたくさん載っていた。
(そうだ 部屋の模様替えをしよう)

イタリア風メンチフォカッチャは トリュフとは如何なるものなのかわからないまま 食べ終わった。
煙草 1本。セブンスターメンソールライト。
ひさびさの煙草の味は まずくもなく おいしくもなく。
(煙草は あんまり すきじゃないみたい)

買ったばかりのCDを 聴きながら帰った。
1曲目は 『お終いだ 絶望だけだ』 って 唄っていて
2曲目は 『何だかそう とてもいい予感がするんだ』 って 唄っていた。
(絶望と希望は 相反していて 混在している)
2003/01/14 (Tue)
 
みえているのは ほんの僅かで 全部じゃない。
みつめているのは 暗闇で 光は射さない。

深い 深い 夜の 海の底 独り 游ぐ サカナ。
宇宙の果て 漆黒の闇の中 漂う ちっぽけな 塵。

みつめているのは 暗闇で 光は射さない。
だけど みえているのは ほんの僅かで 全部じゃない。

何が見える?
何を見てる?
2003/01/16 (Thu)
 
夜の繁華街で 男のひとが 『○○(町名)って このあたりですか?』 と 訊いてきたので
立ち止まって ええ そうですよ と 答えた。
男のひとは もういちど おなじことを 訊いた。
そうです と 答えて 立ち去ろうとすると 『居酒屋に誘っちゃだめですか?』 と
ひどく弱気なかんじで云うので 拒絶の意味を込めて 黙ったまま大きく頷いて 背を向けた。

田舎の最終電車は 早い。
既にぎりぎりの時間になっていたので 急ぎ足になる。
其処から駅までは もう立ち止まらなかった。
2003/01/18 (Sat)
 
昨日よりは今日だったけれど 代わり映えは無かった。

横たわって 瞳を閉じて 自分が呼吸する音を 聴いていた。
幾分苦しそうな気がしたけれど 苦しくはなかった。
瞳を閉じたまま 窓の外をはしる車の音を 聴いていた。
その音から 車の大きさを想像するというあそびを たのしんだ。
すぐ近くに おおきな道路があって 車の往来は わりあい激しい。
今のはトラックのエンジン音だろうなあ と 考えると
脳裏には 砂利だか木材だかを積んだちいさなトラックが 浮かぶのだった。
頭の中では 青い色のトラックだったけれど 実際はどうだったのか 知る由も無い。
あそんでいるうちに いつのまにか 眠りにおちていた。
ただ 眠った。
2003/01/20 (Mon)
 
熱いシャワーと つめたいシャワー。
流れていく熱すぎるお湯 或いは 流れていくつめたすぎる水。
はだかのまま 途方に暮れて めそめそと 泣く夢。
それは 夢だったのに 泣きながら 寝覚めた。

排水溝に 流し去りたいのは なんだった?

忘れちゃった。

喉が 痛い。
はだかのままで さむかったから。
あれは 夢だったのに 喉が 痛い。

花梨酒は 喉に良いらしい。
お猪口一杯くらいを 薄めずに そのまま飲んだら 喉から 胸にかけて 燃えるようだった。
甘ったるくて 香ばしいかんじがして 咳止めシロップに似た味がした。
お湯割りにしたほうが飲みやすいかもしれない と 思って さっそく 試してみた。
マグカップで ごくごく飲んだら ずいぶん あったかくなった。
2003/01/28 (Tue)
 
眠りすぎると頭痛が起きる ということが あるらしい。
脳の血行が良くなりすぎて 血管が拡張して 痛むらしい。
後頭部 右の耳の側から首筋にかけて ずきん と 時折 激しく痛むのは
おそらく それなんじゃないだろうか と 思う。
鎮痛剤が さっぱり 効かない。

眠らないほうが 調子がいいような気がした。
一晩中起きていて そして迎えた朝は 清々しかった。
おしごとの時間まで すこし眠ろうかと思ったけれど
やっぱり止して 犬の散歩に出掛けることにした。
眠ってしまうのが勿体無いような朝だった。
朝日に照らされてピンク色に染まる雲。
そのあとでひろがったしろい霧。
張りつめたつめたい朝の空気。
やがてやって来た朝の喧騒。
いそがしく行き交う車や人。
樹々の枝の先に陽を浴びてひかる葉。
晴れわたったみずいろの空。
ほわりと浮かぶしろい雲。

その 清々しさが こころを 洗い清めてくれるようだったので
なんだかもう大丈夫だろうというような気持ちになった。
そのあとのおしごとは 適度に忙しく 適度にひまだったので
忙しすぎて目がまわることもなく 暇すぎて眠くなることもなかった。
ちょうどいいかんじだった。
ただ 頭は やっぱり 時折 痛んだ。
薬を飲むのは 忘れてしまっていた。
2003/01/30 (Thu)
 
JRの駅から 私鉄の駅まで 大通りを 西へ。
歩いていけない距離でもないので なるべく歩くようにしているのだけれど
疲れきってしまっていたので バスに乗った。
運賃が 100円になってからは 乗ってしまうことのほうが多い。
夜のバスの車内のささやかな蛍光灯の灯りは ぼんやりと明るくて 心地よくうす暗かった。
すこし 眠くて すこし かなしかった。
2003/01/31 (Fri)
 
見慣れない白い大きなワゴン車の窓には カーテンがついていた。
白衣の男のひとが ふたり 車の側に 居た。
お向かいの 玄関先。
緑色のナンバープレートのその車は 暫くのあいだ 停まっていた。
わたしは 自分の家の 陽の当たる窓辺から それを みていた。
穏やかにあたたかい平和な午後で 空は 青く 晴れわたっていた。
いやな胸騒ぎがした。
やがて 銀色にひかるストレッチャーに載せられて
お向かいのおばちゃんが おうちのなかに 運び込まれた。
3ヶ月前に入院したおばちゃんが 帰ってきたのだけれど
おばちゃんは もう 息をしていなかった。