2003/02/05 (Wed)
 
ひとと話すのは 苦手。
常連さんである家族連れの おかあさんが 『犬はみんな元気?』 と 話しかけてきた。
わたしは にこにこと 『はい 元気です』 と 答えた。
すると 『うちの犬たちはみんなしんじゃったの』 と 仰るので
途端にしんみりした気持ちになり なんて云ったら良いのかわからなくて ちょっと考えて
『さみしいですね』 と 云った。
それから その家のおとうさんが 『手術をしてすぐだった』 とか
『犬がいなくなるのはほんとうにさみしいよ』 とか 仰るのを
わたしは ただ 頷きながら 黙って 聴いていた。
心底 さみしい気持ちになってしまったからだった。

説明するのは 苦手。
店は2時を回ると暇で お客さんもいなくなったので 店のテーブルで 広報うつのみやを 読んでいた。
広報うつのみやというのは 市が月に1度発行している市のおしらせがいろいろ載っている小冊子で
新聞に折り込まれて配達されるのだが こんな説明は この話においてさっぱり必要ではない。
兎にも角にも ひまだったので ぼんやりとしていたら 店のガラス戸が がらがらと 開いた。
おじいさんが 店の中に入ってきて 『ちょっとおたずねしますが・・・』 と 云った。
たずねられたのは 店からほど近いところにあるお宅までの 道順だった。
この辺りは住宅密集地であることもあり なんて説明したら良いのかわからなくて ちょっと考えて
そのおうちまで おじいさんを 連れて行ってあげることにした。
連れ立って歩く道すがら おじいさんは 『すみませんねえ』 と 何度も云い
わたしは そのたびに うまく説明できなくてすみません という気持ちになった。
2003/02/10 (Mon)
 
穏やかに晴れた あたたかい日が 続いてる。

庭にパンジーを植えたり 花壇のまわりに石をならべたり 植木に鋏を入れたり した。
パンジーは どれも紫色だったけれど 濃さや明るさが微妙に違っていて それぞれちがういろだった。

スタージュエリーのシルバークリーナーとシルバーポリッシュで 指輪をぴかぴかに磨き上げた。
まるで新品みたいな 銀色のかがやきを 取り戻した。
こまかい傷がたくさん付いているのはなかなか味がある と おもった。

基礎代謝の低下 1日当たりの必要カロリーをあきらかに上回る摂取カロリー おどろくほどの運動不足 と
著しい体重増加との 因果関係。
体重計は壊れているのだと思うようにすれば 気持ちはとても楽になる。
或いは 見なかったことにするのが 良いとおもう。

犬の散歩をたくさんしようと思って 昨日は1時間ほど歩いたのだけれど
犬たちが疲れてしまって ぐったりしているので 今日は手加減してやった。

まるで春みたいにあたたかい 心地よい日々が 続いてる。
2003/02/11 (Tue)
 
ドラッグストアと 輸入食材を扱うスーパーと おおきなショッピングセンター。

★わたしが買ったもの
 鼻炎ソフトカプセル (必需品) 化粧水とウォーターパックジェル (オレンジの香りがするもの)
 無印良品の詰め替えボトル (洗剤を入れる)
★妹が買ったもの
 TimTamのチョコレート (2種類) バンホーテンのココア (缶入りで900円くらいするもの)
 玄米 (長野県佐久でつくられたもの) 納豆 (お買い得品)
 無印良品の食器 (ランチボウル) 無印良品のトリートメント (オレンジの香りがするもの)

帰り道は 雨だった。
つめたく とめどなく しずかに降り続く雨だった。
フロントガラスを 2本のワイパーが いそがしく動いている。
助手席に座って それをずっとずっと目で追っていたら だんだんからだが左に倒れてきたので
『催眠術みたい』 と 云ったら 運転席の妹に つめたくあしらわれた。
わたしにはやっぱり車の運転は無理なのだろう と おもった。
とくに こんな 雨の日は。
2003/02/13 (Thu)
 
予約用紙に文字を記入することが とてつもなく面倒だったのだ。
取り置いてもらっていなかったのはちょっと失敗だったなあ と おもった。

歩いた。ずいぶん 歩いた。

いつものCDショップで すんなり手に出来ると思っていたそれは いくら店内をさがしても見つからず
店員さんに訊いたら 昨日入荷して完売してしまって再入荷は明日か明後日だと 云う。
完売というのは 嬉しかったが ざんねんだった。
わたしはどうしても今日のうちにそれを手にしたかったし 出来ることなら初回盤がほしかったのだ。
ほかのCDショップを探したけれど なかなか見つからなかった。
6軒目で やっと めぐりあえた。
棚に残る最後の1枚を手に取り 素早く初回盤であることを確認して レジに運んだ。
店を出てすぐに封を切って CDウォークマンにセットして そうして溢れ出した音で
かんたんに 満たされたような気分になって また 歩き出す。

歩く。とにかく 歩く。

駅ビルをふらふらしていて 洋服などみていたら まえに立ちはだかるひとがいて
なんだ? と おもって 顔をあげてみたら バイト帰りの妹だった。
こういう偶然は よく起きる。
まるで磁石みたいに ふしぎな力で わたしたちは 頻繁に 引き寄せられ合う。
ドラマチックに云えば そんなふうにも表現出来るのだけれど
有体に云えば 行動パターンが似ているのだった。
わたしたちは しばらく駅ビルをうろうろしたあと 向かいのデパートに移動して 1階の喫茶店で
わたしはアイスコーヒーと苺クレープを 妹はアメリカンとニューヨークチーズケーキを それぞれ 注文した。
喫茶店は全面ガラス張りで そとが よく見える。
日は すっかり 暮れていた。
行き交う人は疎らで 駅前のバスターミナルのオレンジいろのまるい灯かりがたくさん輝いていた。
2003/02/18 (Tue)
 
何気なく聴いていたFMラジオから チャラの新曲とワイヨリカの新曲が流れてきた。
今日は なんていい日だろう。

部屋の雨戸を何度も開けたり閉めたり トイレの窓やお風呂場の窓を開けたり閉めたり
そわそわそわそわ。
夜の7時ごろ やっと 雪が降ってきた。
おおきくてふわふわの雪は 濡れたアスファルトの上で すぐに溶けちゃう。
9時過ぎに外に出てみたときには もう止んでいた。
2003/02/20 (Thu)
 
また。

オリオン通りの まんなかにある 横断歩道。
歩行者用の信号は 青だった。
わたしは 西に向かって あるいていた。
バイト帰りの妹は 東に向かって あるいていた。
また ばったり 会ってしまった。

妹   『なんで会うのかなあ』
わたし 『信号 変わっちゃうよ』
妹   『そうだね じゃあね』

みじかい会話を交わして それぞれ目指す方向に わかれた。

数十分後 駅のホームで 前を歩いているひとのコートの色が 見慣れたうす茶色だったので
駆け寄って 腕をつかまえたら すこし驚かれた。

また。
なんで会うのかなあ。
2003/02/23 (Sun)
 
鋏を取り出して衝動的に髪を切り刻む夜が あった。
おそろしく不揃いになった髪。

自分の躰を傷つける夜が あった。
赤い血。癒えない傷。醜い傷痕。

いまは 前向きな気持ちになっているので
髪は伸ばそうと思っているし 傷は治れば良いなあと思っている。

もうすこしがんばっていきてみよう。
いまは そう おもう。
いまは。

今が ずっと 続けばいいのに。

前向きって 素敵なことだ。
2003/02/24 (Mon)
 
朝から ちらちらと 雪が 舞っていた。

お皿を洗う水が つめたくて 手がかじかむ。

常連のお客さんが 『雪だなあ いやになっちゃうなあ』 と 呟いて
わたしは もっと降らないかなあ とか 積もらないかなあ とか 考えていて
しかし そう口に出すのはあまりにコドモっぽいかなあ と 思ったので
曖昧に笑って それに応えた。

閉店間際に ばたばたと お客さんがやってきた。
時計を眺めて はやくおわらないかなあ と 思ったりした。
お客さんがみんな帰ったあと ファンヒーターの灯油を補充するために 外に出た。
物置まで行って 灯油ポンプを取り出して しゃかしゃかと 押して
タンクがいっぱいに満たされるのをじっと待つあいだ
髪やセーターに しろいちいさい雪の粒が 飛んできてとけて消えていった。

夕方から 屋根や車や植木が うっすらと しろくなっていった。
道路のうえは ただ 濡れるばかりで やがて夜の闇が訪れると
街灯に照らされて てらてらと 光った。
ひろい空き地は 一面まっしろで それは わくわくと 心躍る光景だった。

いつまでたっても 大人になんか なれやしないのだった。
2003/02/25 (Tue)
 
10人の団体客がやってきたのをはじめとして あとからあとから つぎつぎにお客さんがきて
せまい店内は すぐにいっぱいになり わたしは走り回り オーダーのひとつひとつを やっつけていった。
ふだんののんびりとした有様を知っているいつものお客さんに こっそり 『今日忙しいね』 と 云われたりした。

へとへとに 疲れた。
3時におしごとが終わり それから お昼ごはん。
焼きそばに マヨネーズと七味唐辛子をかけて 食べ終わると 眠くなってしまった。

夕方 FMラジオにチューニングを合わせたら また ワイヨリカの新曲が流れてきて
ギターの音色が心地良かったので ヴォリュウムを上げて 聴き入った。

睡魔が だんだん 押し寄せてきて 寒かったのでお布団にくるまって寝そべって
麗央をうしろから抱きしめて あったかいなあこのしろい毛むくじゃらは と 思っていたら
麗央はぐうぐうといびきをかいて眠ってしまったので わたしもつられて眠りにおちて
起きたら 夜だった。

一日って 早いなあ。

犬の散歩。
このごろは 家の近くをちょっと歩くだけなので 犬が ずいぶん 太ってしまった。
そして わたしも。

草gくんのドラマを観ながら バナナマフィンと コーヒー。
バナナマフィンは 妹のお友達の手作りで やさしい味がした。
2003/02/28 (Fri)
 
ケータイショップの店内には ゆるやかなヴォリュウムで 有線だと思われる音楽が 流れていた。
Dragon Ashの あの曲。acoが 英語でうたう あの曲。
紙コップで差し出されたコーヒーは いくぶん 濃すぎる気がした。
手続きが終わるのを待つあいだ くるくるまわる椅子のうえで 聴こえてきている曲のタイトルを
ずっと ずっと 考えていた。

思い出せない。
思い出せない。

うちに帰ってきて CDの並べてある棚を見渡したら そのCDを みつけた。

ああ。
『Grateful Days』 だった。