2003/04/02 (Wed)
 
傘を差して 犬の散歩。
雨粒が 傘の表面にぶつかって立てる音が おもしろかった。ぱちぱち。ぷつぷつ。
こんなに寒くては 桜もまだ咲けないだろう。

おしごとのあいだは ファンヒーターのもえる店のなかで あたたかく過ごした。
昨日から青いあたらしい制服になったはずの郵便やさんたちが ふるいほうの緑の制服で そろって現れた。
『雨が降っていたから』 というのが その理由だった。

午後は 近所の雑貨やさんまで お買い物にいこうと思っていたのだったが
お昼ごはんを食べ終わると 途端にめんどくさくなって やめにした。
『雨が降っていたから』 というのが その理由だった。
2003/04/03 (Thu)
 
自衛隊のヘリコプターが 5機 綺麗に並んで 飛んでいた。
そのうち 4機は もくもくと 灰色の煙を吐いていて
煙は そらに ひかえめなうつくしさで ゆるやかなカーブを描くのだった。
飛行ショーのための 演習だろうか。
よく意味がわからないなあ と 思いながら 見上げていた。

頭のなかに ずっとおなじ曲がかかりつづけることはよくあることで
その日のテーマソングの如く ずっとずっと 鳴り響く。
CHARAの 『ハートの火をつけて』 が 止まらなくなったので
CDウォークマンで その曲ばかりをリピートして どっぷり 浸る。
ハンドクラップが 心地良い。うきうきするかんじ。
しばらくして 『オーシャン』 という曲も 聴いた。
この曲も ハンドクラップが心地良いのだけれど こちらは 気怠くて 物憂いかんじ。

バッグの中から取り出したケータイは 右手を滑り落ちて 地面に叩きつけられた。
アスファルトのうえで ころころと 3回転くらいした。
慌てて拾い上げたのだけれど あちこち 傷付いて 無残な姿になっていた。
あ〜あ。
なにやってんだろ。
傷は 些細なことなのだけれど 気になる。
気にしないようにすればするほど 余計に。
考えることは 考えても仕方の無いことばかり。

桜が咲いていた。
寒さにも負けず。
2003/04/05 (Sat)
 
とらわれすぎないこと。

嘆かない鳥。
ひろい空。
翻弄。
嘘。
塗れ。
つめたい雨。
とどかない闇。

こころのおとを聴く。
2003/04/10 (Thu)
 
公園の入り口で むこうからやってきたのは 同級生だった。
彼女は ベビーカーを押しながら 右手を 無邪気に ひらひら 振った。
自転車に跨ったわたしは 咄嗟に笑顔をつくり それから すこし間を置いて
ぎこちなく 『コンニチハ』 と 云った。
彼女も笑顔で しかし それ以上はなにも喋らずに わかれた。
桜の咲く公園。連なる提灯。しろいテントの売店。アルコールの匂い。たくさんのひと。
花韮 (はなにら) の うすいみずいろの 星のかたちの花が 群生していて 綺麗だった。
2003/04/12 (Sat)
 
山吹の花の 鮮やかな黄色と 葉っぱのみどり。

いそがしいときほど 笑顔を 忘れないでいたい。
たいていの日々は それで どうにかなる勢い。
なるべくなら 笑っていたい。

目覚めても まだ夢のなかに居るような 浮遊感。
2003/04/13 (Sun)
 
夢を みているのかもしれない。

レンギョウの 黄色。ユキヤナギの しろ。蘇芳 (すおう) の あかむらさき。
蒲公英の 黄色。シバザクラの 濃いピンク。諸葛菜 (しょかつさい) の うすむらさき。
桜並木の うすいピンク。しだれ桜の 可愛らしいピンク。ポプラの樹の やわらかなみどり。

景色は 色彩で 溢れていた。
ぼんやり みている。

選挙は いまのところ まだ 棄権したことがない。
政治にそれほど関心があるわけではなく ひまなので 出掛けてみるのだ。
投票所は ちかくの小学校で 校庭の桜は はげしく散っているところだった。
ペンキの剥げたシーソーのうえに 容赦なく 花びらが 降りそそぎ
ほんとうに間断なく降り続けるさまは たいへんに幻想的で
わたしは それを ぼんやり みている。

風が 強かった。
信号待ちのあいだ シャツの裾は 風にあそばれて ふわふわ 揺れ続けていた。
ちいさなあかい風船がひとつ 空たかく 飛ばされてゆくのが みえた。

夢を みていたのかもしれない。
2003/04/14 (Mon)
 
亜十夢はしろい犬だったのに すっかりうす汚れて グレイの犬になっていた。
お風呂場へつれてゆき お湯を じゃばじゃばかけて
犬用シャンプーを 思い切り泡立てて 洗う。

あさっては 注射の日。
2003/04/15 (Tue)
 
カレーのことを 考えている。

だいすきな カレー屋さんが あった。
『インド政府公認』 という 謳い文句。
本格インドカレーと インド紅茶と 手作りケーキのお店だった。
カレーは 肉とスパイスの 『マハラジャ』 と ハーブの利いた 『ナトラジュ』 が あった。
ほかにも カレーピラフと ふつうのピラフも 美味しいのだった。
せまい階段をあがってゆくと その店はひっそりとあって わたしは 窓側の席を 好んだ。
宇都宮の 大通りを 見下ろす席だった。
テーブルは ところどころ 塗装が剥げていて 店内は どことなく 古めかしかった。
ご夫婦と その娘さんが 働いていた。
店の雰囲気が 自分が働いている店とよく似ていたこともあって すごく落ち着く 居心地の良い場所だった。
紅茶も 手作りのケーキも それはそれは美味しいのだったが なんといっても カレーだ。
あれは 決して他所では食べられない。

入り口のシャッターがかたく閉ざされて 閉店の張り紙がされたのは
もうずいぶんと前のこと 何年も前のことなのだが
いま 無性に あの味が恋しくて仕方ない。

あの店は もう 無い。
2003/04/16 (Wed)
 
ちいさな路線バスの乗客は わたし以外は お年寄りだった。
10分程度で着く道のりを 迂回に迂回をかさねて 30分かけて辿り着く のんびりとしたバス。
途中の停留所で お年寄りはつぎつぎに降りて 乗客がわたしひとりになったころ
乗り込んできたのは やはり お年寄りだった。
腰の曲がった おばあさん。
終点が近づいてきたころ わかい女のひとが 乗ってきた。
若いといっても わたしよりも歳上というかんじだったが
ふわふわした髪や 控えめに湛えた微笑が うつくしく 若々しく 映ったのだった。
きれいなひとだなあ と しばし 見蕩れる。

やがて終点に着き 目的地まではさらに別のバスに乗るのだったが 停留所らしきものが見当たらなかった。
売店のおばさんに 『ここで待っていたらバスは来ますか?』 と 尋ねてみると
『次のバスは12時55分だよ』 と 云われた。
時計をみると 11時45分だった。
次のバスがやってくるまで 1時間以上ある。
おばさんは 『歩いていったほうが早いよ あんたの足なら 30分くらいで歩けるよ』 と 云い
さらに 『お天気も良いし 歩いて行きな』 と 云った。
ほんとうに まぶしいほどに 良いお天気だった。
田舎の道を てくてく あるいてゆくことにした。
畑の脇の 新幹線のガードの脇の 一本道を まっすぐ行けば 良いのだった。
菜の花や 姫踊子草や 畑のみどりや 空に游ぐこいのぼりを ながめながら きっかり30分 あるいた。
CDウォークマンから くるりの 『ワンダーフォーゲル』 が 流れていて それは せつなさをつれてきたけれど
できるだけ 元気に 颯爽と あるいた。
きもちがすっかり落ち込んで 老け込んでいるかんじは 否めなかった。
きっと これから 取り戻さなくちゃならないんだと おもう。
売店のおばさんの目には こんなわたしも 若々しく映ったのだろうか と 考えてみる。
2003/04/17 (Thu)
 
足繁く 近所の雑貨やさんに通っていたのは 訳があって
ちりめんのお花の携帯ストラップが 欲しかったのだ。
いつ行っても無いので このまえ おねえさんに尋ねてみたら
水曜日に仕入れに行くから木曜日にはあるかもしれない という情報を つかんだ。

それで 今日の夕方も 行ったのだ。
ひどくせまい店のなかを見渡すと それは まだ無いようだった。
おねえさんは レジのところで 作業をしていた。
どうやら 仕入れてきたものの 梱包を解いているところだった。
レジのテーブルのうえに 透明なビニールに包まれたままで それがあるのを 発見した。
わたしは それを指差して 『あの これ ほしいのですけれど』 と 云ってみた。
おねえさんは わたしをみると 『ああ このまえ訊いてくれたひと』 と 云って
『ちょうどはいったところでよかった』 と 云って
ビニールから 10本ちかくのストラップを取り出して
そのへんにあったダンボールのうえに きれいに並べてくれた。
ちりめんのお花は色も柄もとりどりで ガラス玉のいろもさまざまなので
わたしは 手に取ったり ひっくり返したりして 真剣に選んだ。
欲しい1本が決まるまでに それほど時間はかからなかった。
さいしょに 目にとびこんできた あかとピンクがきれいなもの。

とてもうれしいきもちになる お買い物だった。
2003/04/19 (Sat)
 
『Focus』という映画を みた。

さいしょのほうは退屈だったので ぼんやり眺めていたのだったが
浅野忠信扮する盗聴マニアの青年が 豹変して 暴走をはじめるところから おもしろくなった。
愉快なかんじではなくて どちらかというと不愉快なかんじの はらはらするおもしろさだった。
どうなっちゃうんだろうこのひとは? っていう スリル。

『Stereo Future』という映画を みた。

ばかばかしくて 笑えて だけどさいごにはちょっとしんみりする こういうお話は とてもすき。
桃生亜希子 というひとが すごくきれいで かわいらしかった。
とくに 唇が。
2003/04/21 (Mon)
RADIO BERRY 10th Anniversary BERRY BOMB DIVA NIGHT
わたしは ショートキャラメルスチーマーで 妹は トールラテ。
ポピーシード&クリームチーズパウンドを はんぶんこ。
けしの実が 口のなかでぷちぷちして おもしろい。

ライヴ会場は 当初の予定では サブホールだったのだが
行ってみると メインホールに変更になっていた。
BONNIE PINK・一青窈・熊木杏里・より子。 の 4人が出演する
無料招待ライヴは 思いのほか 応募が多かったらしい。
BONNIE PINKが とてもとても観たかったので 応募したのだった。

はやく行ったので 前から3列めという すごく舞台にちかいところで 観ることができた。

さいしょは 熊木杏里だった。
ちいさくて しろくて ぷにぷにしていて とてもかわいらしくて 透き通る声で うたう。
すきなかんじのおんなのこ。
『窓絵』という曲しか知らなかったけれど ほかの曲も すてきだった。

つぎは よりこ。で そのつぎは 一青窈だった。
とてもがんばってうたっていたけれど わたしはあんまり すきじゃないのだった。

さいごは BONNIE PINKで すばらしかった。
もう なにもいうことはない。
とてもとても すばらしかったのだ。
2003/04/22 (Tue)
 
どういうわけか ずっと 金曜日のような気持ちで過ごしていたのだけれど 火曜日だった。
俯くとじんわり涙が滲んできて 油断するとぽろぽろ零れた。
こういう日もあるんだ と おもった。
しばらく痛いのかもしれない。
2003/04/25 (Fri)
 
こころ砕け散るおとを聴いている。