2004/07/01 (Thu)
 
ベビードールよりも スイドリームスの気分。
眩しい のうぜんかずらのオレンジ。駅までの道。
CDウォークマンのなかみは 『さよならストレンジャー』。
終点の改札を抜けるころ 『東京』が流れて だからつい 速足になった。
2004/07/02 (Fri)
 
茶色い犬が パソコンに向かうわたしの傍らにやってきて わたしの肩に前足を置き ひいいんと啼く。
『お散歩につれていってください』 って たしかに聴こえたような気持ちになる。
メッセンジャーを退席中にして でかけてみた外は すずしい風が吹いている。
濃い黄色の まあるい月が ひかり輝いている方角に向かって 走ってゆく。
2004/07/03 (Sat)
 
かなしい夢を みた気がする。
むかし繰り返しみた 迷子になって泣いている ちいさなコドモの夢だったのかもしれない。
手に持っていたはずのバッグを いつのまにか失くしていて ひとり置き去りにされる あの夢。
まるで憶えていないので ぜんぜんちがう夢を みていたのかもしれない。
目が覚めたら ただ かなしいという気持ちだけ 憶えていた。
置き去りにされてしまうのかな。置いて逝かれてしまうのかな。
2004/07/04 (Sun)
 
夕暮れドライヴ。黒ゴマコーンのうえで まあるくふたつ重なってる アイスクリームの幸福。
黒ゴマコーンは ふつうのコーンよりも すこししょっぱいかんじ。ゴマの味はしないみたい。
スーパーの食料品売り場のなかで なんといってもおもしろいのは 魚売り場。
しろいトレイに乗せられ きれいにラップをかけられた魚のひとつひとつ。
値札シールに印字された 名前をみて歩く。知ってるのもあれば 聞いたことないのも。
どのように料理するのかだとか どんな味がするのかだとか いろいろ考えてみたり。
2004/07/06 (Tue)
 
店にはクーラーが無い。扇風機がぐるぐるがんばっているけれど ものすごく暑い。
お客さんがきたなら 冗談みたいに熱いお茶を出す。我慢くらべのような 店のなか。
それでもお客さんは くじけず毎日やってきては 飽きずにいつものメニューを注文する。
調理場と客席を行ったり来たり 走り回ってふらふら。汗だくだく。灼熱地獄熱中症一歩手前。
食器を洗う水のつめたさがひどく心地良くて 手がふやふやふやけても 洗い続けてみたりしている。
2004/07/07 (Wed)
 
朝の散歩 もっと早い時間に ずらさなくちゃだめなかんじ 照りつける日差し。
植え込みをぐるりと囲う柵に つやつや茶色い 蝉のぬけがら くっついている。
開店前 水播きする ホースの先には シャワーノズルが 付いている。
こまかい こまかい 水の糸のなかに ちいさな ちいさな 虹がみえる。
夜の散歩 21時過ぎ まだ熱を帯びてるアスファルト
てのひら押し付けて そのあたたかさ 確かめてみてる。
2004/07/08 (Thu)
 
息をひそめて 数える呼び出し音 繋がらなかったコール AM3:39。
お昼過ぎに目が覚めて 携帯手にとって メール届いてて おへんじして。
それにしても暑くて なんもやる気出なくて 外に出る元気無くて。
暑さが体力を奪っていって なにもしてないのに疲れてて やけに眠たくて。
2004/07/09 (Fri)
 
甘い香り。曲がり角。くちなしの花。やわらかそうなしろい花びら。
愛犬と真剣に追いかけっこ。向かいの会社のひとに目撃された。気まずい空気。
ヒマラヤユキノシタという植物についてしらべた。ピンク色のきれいな花は春咲き。
家のまえにある まあるい葉っぱのその植物の 花を 今年は見逃してしまったらしい。
来年の春。ちゃんとみてみようとおもう。来年の春。ずいぶん先のはなし。
2004/07/10 (Sat)
 
どうん という音がしたと思ったら 揺れはじめたのだった。部屋じゅうが ぐらぐら 揺れたのだった。
どうん? どどどど? ごごごご? 兎にも角にも 音がする地震。
震度は3。もっと揺れたかんじだったのに。
2004/07/11 (Sun)
 
お昼まえに 激しい雨が降り出した。そのせいか お客さんは疎ら。涼しい風が 店の中吹きあれて 風鈴鳴り響く。
時折雨は止んだから 空を見上げるために 店のまえに出てみた。虹を探したのだけれど どこにもみつからなかった。
雨が止むと お客さんがぞろぞろやってきて そこそこ疲れ果てた。働きおわった夕方 うつらうつらまどろんだ。
日が暮れかけたころ起き上がって そういえば投票にいくんだったと思い出した。
しろい毛むくじゃらの犬をお供につれて ひかり輝く夕焼け空に向かって歩いた。
小学校の校舎の横には あさがおの鉢がずらり並んでいて たぶんそれは一年生が育てているんだとおもうんだけれど
あさがおの横には プチトマトの鉢がずらり並んでいて それは何年生がそだてているんだろうかとか考えた。
二年生かしら。プチトマトあかい実がたくさんなってる。おいしそう。役にたつこども。
帰り道 夕焼けが過ぎ去った空は どんより曇った灰色の空。コウモリが旋回していた。
いっぴき にひき と 目で追って数えて それが10匹ほどの群れなのだとわかる。
ところで コウモリを数える単位って? 匹 で 良いんだろうか。
2004/07/12 (Mon)
 
ガラス戸をそうっとあけて いつものわかい郵便やさんが 店のなかをのぞいたのは 2時半すぎのこと。
営業時間は 3時まで。まだだいじょうぶですよ ってかんじで にっこりしながら
『いらっしゃいませ 奥へどうぞ』 って 云ってあげた。奥の座敷で いつものメニュウ。
食べ終わっても のんびりしていらっしゃった。3時をまわっても お帰りになられるようすが まるで無かった。
暖簾を仕舞っちゃって 閉店しちゃって わたしひとりで お店番。そんで だいぶ待ってた。
ようやく郵便やさんが奥の座敷からでてきたのは 3時50分のこと。
眠たそうに 目をこすりながら 『遅くまですみません』 って 1000円札呉れた。
『だいじょうぶですよ』 って にっこりしながら お釣りを渡した。
おなかいっぱいになって おひるねしちゃっていたんだなあ。起こしてあげたほうが よかったのかしらん。
元気よく 走り去ってく 郵便やさんの バイクの音。
2004/07/13 (Tue)
 
左目の瞼が 痙攣し続けている。世界が 揺れてみえる。

夜を明かすということは 体力という点においては まだ無理じゃあ無いのだけれど
お肌の状態という点においては もう無理なのだ。
一晩 眠らないでいる影響は お肌に顕著に現れてしまうのだった。
毛穴がひらいたり 目のしたがしわしわになったり かさついたり脂ぎったり。
もうすっかり 年老いてしまっているんだということを はっきりと自覚する。

そのうえ 左瞼の痙攣。
2004/07/14 (Wed)
 
おしごと終わってごはん食べてシャワー浴びてうとうと眠って起きて眠って起きたらすっかり夜になってて
獣医さんに薬を貰いに行くんだったのにあと15分で閉まっちゃうっていう時間になってて
獣医さんに行くのは諦めちゃってごはん食べてまた眠った。いちにちってあっという間。
2004/07/15 (Thu)
 
モスバーガーの ガラス張りの客席から 外をみていた。
外は 激しい雷雨。どしゃどしゃ降って ごろごろ鳴って ときどきぴかぴか光った。
ありふれた表現を用いるならば 『バケツをひっくりかえしたような』 雨。
目の前の ガラスをみていた。
たくさんの水の帯が 天井から床まで ものすごい速さで流れていた。
ガラスの内側は 雨からは護られているんだけれど クーラーが効きすぎていて すこし寒いのだった。
カーディガンを持ってくるのを 忘れてしまった。二の腕をさすってみるけれど 躰はどんどんひんやりしていくばかり。
ラッシーのMサイズは あれ?これMサイズ? っておもうような おおきなグラスに入っていた。
なかなか飲み終わらなくて 雑誌を読み耽りながら ゆっくりゆっくり飲んだ。
すっかりぜんぶ飲み干してしまっても 外はまだ激しく降リ続いているところなのだった。
目の前の ガラスをみていた。
たくさんの水の帯が 天井から床まで ものすごい速さで流れていた。
ガラスの内側で 水槽の中游いでいるみたいな気分。
安全で安心な場所に居るのだけれど どこにも逃げられないかんじ。
そうして しばらくぼんやりと 雨に閉じ込められていたのだった。
2004/07/16 (Fri)
 
停電。
スーパーの食料品売り場を 探険しているときだった。
店じゅうの電気がふうっと消えて 幾人かの客が 驚いたような悲鳴のような声をあげた。
よく見回してみると 天井に埋め込まれているちいさなまるいライトは点いているし 冷蔵庫もうごいているし
レジのモニターのようなところの電気も消えずにうごいているし 完全な真っ暗闇というわけではない。
停電にも負けないしくみが 発電装置だか蓄電装置だかそんなような設備が 整っているらしいようすだった。
電気はすぐに復旧したが 外は 昨日に続いて激しい雷雨なのだった。
また 雨に閉じ込められてしまった。
スーパーの片隅の 休憩コーナーで あたたかいコーヒーを買った。
自動販売機から 紙コップに注がれてでてくるそれは 70円だった。
商品のボタンを押すまえに お砂糖少なめボタンを ぬかりなく押す。
お砂糖を入れたコーヒーというのを ひさびさに飲んだ。
椅子にすわってそとを眺めながら ちびちびと飲んだ。
あまくて にがい。

ちょうどそのころ バイト帰りの妹は 電車のなかからわたしの携帯にメールを打っているところだった。

件名 : (かみなりのマーク)で
本文 : (でんしゃのマーク)が動かない(目が×印のマーク)もう40分も缶詰よ〜(にぎりこぶしのマーク)

電車のなかに閉じ込められている惨状を訴えるメールだったのだが わたしはまったく気づかなかった。
携帯は バッグの奥深くで マナーモードになっていたのだった。
雨が小止みになり うちに帰り着いても 携帯のことなど考えもしなかった。
遅い時間になって 疲れ果てた様子の妹が帰ってきて 『メールみてないの?!』 と 云うので
慌てて携帯を探して ようやくメールをみたのだった。メールに見入るわたしの横で 妹は
信号機だかに落雷して電車がさっぱり動かなかったこと 結局駅からバスが出てやっとうちに帰って来れたこと
2時間以上も電車に閉じ込められて大変だったこと などを ひとしきり 嘆いていた。