2004/08/01 (Sun)
 
しおからとんぼ飛んでる。みずいろなのはオス。さんざめく蝉。降るような声。
ちぐはぐな日。片方ずつちがうサンダル。失敗をひとつ。100円すくなく貰っちゃった。
計算まちがった訳じゃなくて オーダー書き留めるところで違ってて 伝票にまちがった値段が自信たっぷりに。
右肩甲骨したあたりと右肋骨のあいだが ひどく痛む。息をするのが苦しい。声をだすのはもっと辛い。
聞きおぼえのないなまえの消炎鎮痛剤を 塗りたくって凌ぐ。血行を促進する ビタミンE配合。
背中の皮膚が ざわざわする。下着の締め付けが気持ち悪いから できるかぎり外している。
からだのあちこちが痛い。齢には抗えない。いろいろ調子わるい。とある疾患については とりあえず食事療法。
食べたほうがいいものと 食べてはいけないもの。野菜はたくさん食べて 肉は控えて 納豆は毎日。
ポテトチップスは食べてはいけないものなのだろうなあとおもったら無性に食べてしまいたくなって結局ひとふくろぜんぶ。
コイケヤポテトチップスうすしお味は じゃがいもの甘さが際立っているようにおもう。
いちにちいちにち おわりにちかづいていくかんじ。もう8月だし。
2004/08/02 (Mon)
 
工場の庭には 枝の張りめぐらせ方の見事な さるすべりの樹があって
その横を通るのは 毎朝散歩するときの ひそかなたのしみ。あかむらさき。みどり。鮮やかな色彩。
夕暮れ 蝉の声聴きながら 雪印トルコ風アイスヨーグルト味を ぐるぐるかき混ぜて伸ばしながらたべる。
『ディズニーランドのおみやげなにがいい?』 って訊かれたとき 『チョコレートクランチ』 って答えたんだった。
それしか 思い浮かばなかったから。ほんとに 買ってきてくれた。食べてはいけないものかも。気にしないけど。
それから ちょうちょとお花のかたちの ネイルジュエリー。 (ディズニーランドじゃないところで買ったおみやげ)
どうしたものか。ネイルアートなんてしないし。水仕事に備えて みじかく切り揃えた はだかの爪。
深夜 うちのすぐ脇のところに 若者が集まって騒いでる。
どうにかならないものか。パー子みたいな笑い方の おんなのこの声が 気に障る。
おねがいしずかにして。ねむれないの。
2004/08/03 (Tue)
 
シャンプーしていたら 浴室の扉の向こう側で がたたんと物音がする。
ななな何事? っておもって すりガラスの まんなかが折れてひらく扉を あけてみる。
脱衣所の床に しろい毛むくじゃらが 伏せをしていた。申しわけ無さそうなようすで 上目づかいで わたしをみる。
脱衣所と茶の間のあいだの引き戸は閉めてあったとおもうんだけれど きっと僅かな隙間があったのだ。
隙間に鼻先突っ込んで からだの幅と重みで引き戸をあけて こちら側にはいってきたのであろう
その姿を想像してみたら かわゆくて かわゆくて シャンプーまみれの頭のまま 撫ぜてやる。
しろい毛むくじゃらは ときどきちょっと さみしがりや。
2004/08/05 (Thu)
 
電車を ふたつ 乗り継ぐ。ひとつめは乗り遅れて ふたつめはぎりぎり間に合った。
降り立った駅から 30分あるいて お気に入りの温泉に辿りつく。
お湯にゆっくりと浸かり 日常の煩わしいこと いろいろ忘れて
からっぽのこころになるように努めるのだったが 雑念にとらわれることしきり。
あわがぶくぶくでてくるお風呂 耳許でお湯がはじけるおと。

音楽だとか 本だとか ふとした言葉だとか 不意にあのころを想い起こさせて わたしを苦しめるもののこと。
2004/08/06 (Fri)
 
夜から朝にかけて幾度か目を覚まし 右胸の耐え難い痛みで起床した。
胸は 一日中ひどく痛んだので ひねもすだらだらぼんやりと過ごした。
妹の買っている雑誌を ぱらぱらめくってみるのだったが 活字はうまく追えず
洋服だとか髪型だとかお化粧品だとか 写真ばかりを眺めた。

ぎんいろのバケツに水を張り 家の前の アイビーの茂みのなかに置いた。
葉っぱやらお花やら浮かべたそれを ”ちいさな池” と 呼んでみる。
2004/08/07 (Sat)
 
起きてみると右胸の痛みは消えていて 代わりに左胸がすこし痛んだが それもすぐに治まった。
ひさかたぶりに体調が良いようにおもったので 髪のいろをどうにかした。
苺ナチュラルという色に染まった髪で ちょっとごきげん。
調子にのって からだに悪そうなものを食べ過ぎた。
2004/08/08 (Sun)
 
洗ったシーツ 2時間で乾く。
とおくで おまつりのおと 響く太鼓 笛の音。
くちびるの端に疲れが溜まったときの兆候があらわれて 心なしか右胸の奥がしくしく痛むので ふて寝。
おそろしくねむたい。ねむってもねむってもねむってもねむってもねむってもねむってもねむってもねむってもねむたい。
2004/08/09 (Mon)
 
納豆ごはんやら 納豆スパやら 冷奴やら。
ビタミンBを摂ることに 専念している。
くちびるの端の悪魔が 暴れださないように。
甲斐あって水疱は控えめに潰れ 見るも無残なかさぶたにならずに済んだ。

からだの毛を剃り整えるのは どうしたって苦手。
血管の浮き出た 骨っぽい腕に キティちゃんの絆創膏貼り付けながら 高校野球 第4試合を 観る。
控えのピッチャーはなかなか画面に映らなかったけれど 7回裏あたりで ベンチにいる姿がおおきく映って。
そのうち出番があるといいなあとおもって 応援している。
2004/08/10 (Tue)
 
このところ かかりきりだった小説を ようやっと読み終えた。
三姉妹がでてくる ながいながいおはなし。

しろい毛むくじゃらと お散歩はじめた途端 おおきな雨粒 ぼたぼた落ちてきた。
不愉快に肩や腕を濡らしていくから いそいで取って返した。

あんまり瑞々しくない梨をたべた。
2004/08/16 (Mon)
 
なつやすみのはんぶんは だらだらと無為に過ごして あとのはんぶんは いそがしくあそんだ。

なかがわ水遊園 魚のトンネル ヒトデやサメの手触り 池とか芝生とか売店とか 鮎の炭火焼
アスレチック 揺れる地面 道の駅のジェラート アメリカンドッグとピーチティー
せまい山道 ゆりがねの湯 盆踊り大会を中継する田舎のテレビ 風呂上りの豆乳
カフェ・ド・グランボワ 有形文化財に指定されている建物 SEIKOSHAのおおきな時計
とてもおいしかったゴルゴンゾーラのリゾット ローズヒップティーは梅干みたいな味
中止になった花火大会 スコールみたいな雨 地球を憂う会話 河みたいな道
柊あおい展 生原稿をみるときの高揚感 お堀でみたアヒル 公園でみた黒アゲハ
佐野ラーメン おぐら屋 行列に並ぶ夕刻 わかいカップルと相席 夢のようにおいしいスープ
佐野プレミアムアウトレット お気に入りになるであろう帽子 ストロベリーフラペチーノの甘ったるさ
うつくしい夕焼け ぐるりと見渡せるひろいひろい空とみどりの山並み いくつかのトンネル
犬たちのために買ったあたらしい首輪とあたらしい迷子札 店のそとにいたおとなしいビーグル
ぶどう団地 石灰をつくっている山のなかの町 夏休みについて語る福山雅治のラジオ
足利の街 花屋の2階というなまえの雑貨やさん 急な勾配の階段 ポーチュラカの花
はるばる群馬太田まで ジャスコめぐり はなまるうどん ドトールのアイスソイラテ テラス席の心地良い風
よるのモスバーガー 辛かったナンチョリソ 持て余しぎみのラッシー しろい錠剤3粒
ながいドライヴ スピッツを聴きながら 欠伸噛みころす助手席 左腕よりも濃く日に焼けた右腕。

夏の思い出のいろいろ いつか遠くなってしまう 過ぎ去ってゆく時間たちの愛しさ。
2004/08/17 (Tue)
 
控えのピッチャーが登板したそのとき わたしは定期健診のために歯医者さんにいた。
ばかみたいに口をあけているあいだに試合は終わってしまって みたかった肝心の場面は見逃した。東北高校敗退。
夏がおわる。あらゆるものはおわる。なにもかもおわるのだ。だからきっとだいじょうぶ。
bonnie pinkの やさしくかわいらしいうたを 聴きつづけている。『Eve's Apple』という曲の オルガンのおと。
2004/08/18 (Wed)
 
せかいがぐわんぐわんゆれている。たおれないようにきをつけている。なつやすみにあそびすぎた。
疲れが溜まったときにあばれだす悪魔が また顔をだした。下くちびるのまんなかに 水疱が5つ6つ。
これ以上悲惨なことにならないためには 兎にも角にもビタミンB。祈るようなきもちで いつにも増して納豆たべている。
2004/08/19 (Thu)
 
涙の海に溺れている間に いちにちが終わった。
たくさん泣くと 顔が腫れぼったくなるので こまる。
茹でただけの丸ごとのオクラに ごまだれつけて食べると美味。
2004/08/20 (Fri)
 
目覚めてみると くちびるから出血しているので 気分が塞ぐ。
世の中が オリンピックオリンピック云い過ぎるので 苛立ちを隠せない。
桃と林檎のあいだのような食感の 黄桃をたべた。
2004/08/21 (Sat)
 
ちいさなお祭りに 連れていかれた。ジェット風船飛び交う 芝生の広場。
響くお囃子 提灯の灯り やぐらのまわりぐるり囲む かんぴょう音頭の踊りの輪。
たこやきとチヂミとチーズもちを すこしずついただきながら 花火が上がるのを待つ。
たこやきには 紅しょうがが入りすぎているようすで 焦げてすこし苦かった。
カウントダウンしてはじまった花火は いささか小さめで迫力のないものだったけれど それなりに綺麗。
ちょうちょのかたちの花火やら ねずみ花火みたいなかんじの夜空をはしりまわるものやら。
きらきらひかりながら 滝のように流れて はかなく消えていく花火が うつくしかった。
芝生に敷いた レジャーシートのうえで 寝転がってみていた。
ぼんやりと 消えてゆくもののこと おもいうかべながら。
2004/08/22 (Sun)
 
からだがよわると こころもよわる。
風邪薬と 鼻炎薬と 鎮痛剤。どれも飲んでしまいたかったのだけれど
成分が似ているそれらの薬は どうやら飲み合わせてはいけないらしいので
とりわけ症状が重たく感じる鼻水をどうにかするため 鼻炎薬だけを飲んだ。

テレビの音だけを聴いていることは よくあるのだった。
水の都を映しているのであろう番組 きこえてくるイタリア語。
facile (かんたん) だとか avanti! (すすめ!) だとか わかるところはごく僅か。
そろそろ 本格的に 復習しないといけないようにおもう。
2004/08/23 (Mon)
 
そとは さあさあと雨が降っていて すこし肌寒い。
鼻水は治まらず 肺は痛み 舌も痛み 頭は重たい。
声が あまりにおもしろいことになっているので お客さんに労わられる始末。
ねぎとみょうがと溶き卵をいれた あたたかいおうどんで 温もる。
2004/08/24 (Tue)
 
店のなかは ポルトガル語が飛び交っている。
ポルトガル語は イタリア語にちょっと似ているから すこしくらいわかるかもしれないっておもって
聞き耳立てているんだけれど なにひとつわからずじまい。
彼らは仲間内で話すときは母国語だけれど 日本語も流暢なので 注文も会計も滞りない。
800円です と告げれば 100円玉3まいと500円玉いちまいを すぐさま渡してくれる。
ふたつの国の言葉を きちんと身につけているのは すてきなことだとおもう。
ブラジルの血が流れる 彫りの深い顔のおとこのこたちを 尊敬のまなざしでみつめる。
日本語しか喋れないのは癪なので 思い出したように イタリア語の本をぱらぱらめくる。
2004/08/25 (Wed)
 
犬に与える缶詰の ひらいた蓋の端で 右の人差し指をさっくり切った。
迂闊に生きているので 生傷が絶えない。
ようやっと 鼻水が止まったが 咳がひどい。
それでも午後は 妹と 買い物にでかけた。
歳が離れているほうの妹が運転する車に乗るのは はじめてのことで
いつもとは違って右ハンドルの車だし 助手席からみえる景色も微妙に違うし すこし緊張して乗せてもらった。
いろいろ喋りかけていたら 曲がり角ひとつ通り過ぎちゃって やんわりと窘められた。
まだまだ不慣れな妹が運転手のときは しずかにしていたほうがいいのかもしれない。
あたらしい箸とか あたらしい歯ブラシとか いろいろ。
2004/08/26 (Thu)
 
オリオン通りから 脇の小道にはいって 右に曲がり 川沿いの石畳の道をゆく。
雑居ビルの2階 階段を上がっていって ビニールシートの のれんのようなドアのようなものを くぐる。
外国のものや日本のもの いろいろなかわいらしいものが置いてある ちいさな雑貨屋さんで
妹の誕生日プレゼントを 選んでいたのだった。
もうすぐ26歳になる あの子は何が欲しいんだろう やっぱり無難にピアスだろうか?
などと考えながら アクセサリーの並ぶ棚を真剣に見ていたら となりに誰かやってきて
顔をあげてみてみると それは妹だったので びっくりして 素っ頓狂な声をあげてしまった。
バイト帰りの妹とは ほんとうにたびたび 街のなかでばったりと出くわしてしまう。
『いまちょうどお誕生日プレゼントを選んでいたのよ』 と 白状して 『何が欲しい?』 と 訊いてみた。
『アクセサリー』 という答えが返ってきたので 『ピアス?』 って訊いてみたら
『アンクレットが欲しい』 という意外なお答え。アンクレット・・・。アンクレットが欲しかったのかあ。
そこのお店にはアンクレットらしきものが見当たらなかったので ふたりで べつの雑貨屋さんに向かった。
川沿いの石畳の道をちょっと行って 一旦オリオン通りに出て また小道にはいって
右側にある古いビルの 地下駐車場から 小さなエレベーターであがった3階にある雑貨屋さん。
アンクレットは数点置いてあったから そのひとつひとつを 手に取ったり眺めたりしたのだったが
妹は どれも気に入らないようすで 購入には至らなかった。
あんまりごてごてチャームがぶら下がっていないものがよいだとか シルバーがぎらぎら輝きすぎているものはだめだとか
こまかい注文ばかりが 増えてゆくのだった。