2005/08/06 (Sat)
 
温室みたいな 温泉みたいなプールで あるいたり 浮いたり 漂ったり。
ゆらゆら 水のなか。

ウォーキング教室の わかいおんなの先生は まだまだ新米らしく
しきりに 『おおきく息を吐いて〜』 と 云うのだったが
あるきながら いったいどのタイミングで息を吐いたら良いのか いまいちわからない。
吐くタイミングがわからないので 吸うタイミングもわからず やや息苦しい思いをした。
暫くのあいだ わからないままであるいていたら ベテランらしき男の先生がでてきて
『息を吐いて〜ふうう〜』 と 息を吐く実演付きでおしえてくださったので
まねっこしてみたら うまいこと息ができるようになった。
足を踏み出すとき 力を入れるとき おおきく息を吐く。
おおきく息を吐くと 自然とおおきく息を吸い込むことができる。
有酸素運動の 基礎の基礎のようなことを知る。

水のなかは たのしい。
2005/08/07 (Sun)
 
さいきん夢中になっている芸人さんが お祭りにやってくるらしいという情報を小耳にはさみ
とおい街のお祭りに お笑いライヴをみるためだけに はるばるでかけた。

目の前でみる憧れのひとは 想像以上にひょろりと長く たいそう可愛らしかった。
横からみたら あまりにもうすっぺらいので びっくりした。
笑ったときに 口のよこにできる皺が すてきだとおもう。

アバラだったり 骨みたいにやせていたり おじいちゃんみたいな顔だったり
今にも死にそうだったりするおとこのひとに どきどきする性質だということに 気づいた。

遠い 遠い夏。
ほそい ほそい腕の記憶。
2005/08/14 (Sun)
 
フェットチーネを アラビアータ風味にこしらえて パソコンに向かいながらいただく。
パソコンの画面の 向こう側にいるひとは 格闘技のテレビをみていて
格闘技は男の夢なのだとおっしゃるのだが わたしは その良さがまるでわからないでいる。
そんなことよりも 熱くて辛いフェットチーネとの格闘に 夢中になっている。
2005/08/16 (Tue)
 
おおきな地震があったとき おおきなショッピングセンターの レジに並んでいるところだった。
はじめは 地震だということがわからなかった。なんだかふらふらするなあ と おもっていたら
まわりのひとたちがざわざわして 誰かが 『地震?』 と 呟いて
見上げてみると 天井から下がっているレジ番号の札やら売り場案内の札やらライトやら 揺れていて
ああ地震なんだわたしだけが揺れてるわけじゃないんだ と わかった。
立っているのがつらいほど 座り込みそうになるほど ゆらんゆらん ながくおおきく揺れた。
あたらしくできたばかりのおおきなショッピングセンターが 天井ごと崩れ落ちてくるのではないか?
などと思うほどに ゆらんゆらん ながくおおきく揺れつづけたので
こんなところで死にたくないなあ と ぼんやりおもった。

地震がおさまって レジを済ませて 車に戻って ラジオをつけると
アナウンサーが 震度がいくつだとか 津波がどうとか 云っているところだった。
北のほうで たいへんおおきな震度を記録したのだとわかった。
このあたりはそれほど強くなかったようすで それでも生命の危機を感じたので
北のほうのひとたちは どんなに恐怖だったろうとおもう。

車を走らせ 向かった先は プールと温泉のある施設で
なつやすみのいちにちを 水のなかで過ごす計画なのだった。
温室みたいな 温泉みたいなプールで あるいたり 浮いたり 漂ったり。
プールに入ったり 温泉に入ったり。

施設のロビーには 大画面のテレビがあって NHKを映していた。
ニュースが映ったり 高校野球が映ったり していた。
プールからでてくると ニュースをやっているところで 地震の被害のようすを伝えていた。
新幹線が止まっているようすや 埼玉のどこかで家が倒壊したようすが 映しだされた。
さらには 屋内プールの 天井が落ちてきたようすが映しだされて 戦慄した。
さきほどまでわたしがいたプールに似た 屋内プール。
水着でいるところに 天井が落ちてくるなんて どんなに恐怖だったろうとおもう。

夕刻 休憩室で 湯上りのバニラアイスをいただいているうちに
そういえば しろい毛むくじゃらは無事だったろうか と 思い出す。
あの犬は ちょっと臆病すぎるきらいがある。
あんなに ながくおおきく揺れつづけて 大丈夫だったんだろうか。
畳を掘ったり お風呂場をめちゃくちゃに荒らしたり していないだろうか。
テーブルのしたで震えたり 情けない声で鳴いたり していないだろうか。
怯えたしろい毛むくじゃらの姿を はっきりと思い浮かべてしまって
さらに想像は どんどん悪いほうに悪いほうに向かっていって
家具が倒れて下敷きになっていないか ふるい木造の我が家は崩れなかったんだろうか
埋もれたしろい毛むくじゃらちゃん・・・かわいそうな毛むくじゃらちゃん・・・
というようなところまでエスカレートしてしまい いてもたってもいられなくなり
ほんとうは のんびり閉館までそこに居たいような気持ちも すこしあったんだけれども
一刻も早く 家に戻ることに決め 陽が落ちないうちに 帰途についた。

果たして 家まで戻ってみると
ふるい木造の我が家は しゃんと在るべきところに建っており
しろい毛むくじゃらは いつものように やかましく出迎えてくれた。
部屋のなかも べつだん被害は無く 窓辺に置いてあった鏡が布団のうえに落ちている程度だった。

無事に再会できた喜びのあまり しろい毛むくじゃらを抱きしめて撫ぜまわすが
しろい毛むくじゃらは 腕のなかで いつものように ぼんやりしている。
2005/08/19 (Fri)
 
ながいながいなつやすみが終わり いそがしい日常に戻った。
つぎつぎにやってくるお客さんに 『いらっしゃいませ』 を云い お茶を出して注文を訊き
いくつもの注文をすっかり覚え 皿やらなにやら並べ あれこれと準備したり盛り付けたりして
出来上がった品物を運び どなたから幾ら貰うのか計算し レジに立ちお金をいただいて
『ありがとうございました』 を云い テーブルを片付け 洗い物をする。
暑い 熱い 店内を いったりきたり 走り回る。

走り回るときに 水のなかであるくときの呼吸法を 思い出している。
足を踏み出すとき 力を入れるとき おおきく息を吐く。
サンダル履きの足を 前に出すときに そのようにおこなってみる。
此処は 水のなかなんかじゃあないけれど。
おおきく 息を 吐く。
2005/08/27 (Sat)
 
いままでみたこともないほどの近さで 打ち上げ花火をみた。
あたまの真上で 花火が 炸裂する。
すばらしく 綺麗だった。
きらきらと 流星雨の如く 降り注ぐ。
火の粉が 降りかかってくるんじゃあないかというような すごい迫力。
音もすさまじくて 花火が上がるたびに からだがびくんとなる。
爆弾が落ちてきたんじゃあないかというような すごい音。
からだの内側に どうんどうんと 響きわたる。
あんまりびくびくしているので 笑われた。