2005/09/15 (Thu)
 
工場の庭の 枝の張りめぐらせ方の見事な さるすべりの樹。
今年は 花の付き方が疎らで 威勢がわるいかんじ。
ひそかなたのしみにしていたので いくぶんがっかりした心持ちで 眺める。
工場は 近々 閉鎖が決まっている。
その後は いったいどうなるものか まだしらない。
おおきなたくさんの建物ぜんぶ 取り壊すんだろうか。
さるすべりの樹は いったいどうなるんだろうか。
来年のいまごろ また此処で 花を眺められるのかしら。

そんなことを思いながら ぼんやり歩いていたら 小学生とすれ違った。
小学校2年生か3年生くらいのおおきさの おとこのこひとりと おんなのこふたり。
おんなのこふたりは どうにも見覚えがある。
『なんか会ったことあるね?』 と たしかめると おんなのこたちも
『会ったことあるね』 『わたしこの犬しってる』 などと 云うのだった。
いつだったか パグの話を聞かせてくれた おんなのこたち。
『どの子がパグを飼っている子?』 と 尋ねると
ひとりの子が 『わたし』 と 云いながら 威勢良く手を挙げた。
訊いてはみたものの おんなのこふたりは どことなく雰囲気が似ていたので
すぐに どちらがどちらだか わからなくなってしまった。
2005/09/17 (Sat)
 
夏の初めに撒いた ふうせんかずらの しろいハート模様のついている茶色い種は
ひそやかに芽を出し すくすくと伸びて しろいちいさな花を たくさんつけた。
やがて 花は みどりいろの風船みたいな袋状のものに 姿を変える。
風船みたいなものが 茶色く色づいたら とりごろ。
風船を破くと 撒いたものとおなじ しろいハート模様のついている茶色い種が
ちゃんと出来上がっていて ころんころんと とびでてくる。
ふたつぶ あるいは さんつぶ。
風船は どんどん茶色くなって 種は どんどんとれる。
撒いた種の数より ずいぶんたくさん増えた。
また来年 この種を 庭に撒こう。
ふうせんかずらの しろいハート模様のついている茶色い種を どんどん増やそう。
2005/09/30 (Fri)
 
髪を うつくしくやわらかなあかいいろで染めたおばあさんは
いつでも 開店してまもなく お見えになって
いつでも お持ち帰りのメニューを 注文される。

注文の品が できあがるまでのあいだ 板敷きにちょこんと腰掛けて
お財布から お金を数えて とりだしていらっしゃる。
すっかり常連さんなので 値段も すっかり記憶していらっしゃる。

品物をお渡しすると ちょうどの金額を くださる。
握りしめられていた硬貨は 人肌にあたたまっている。

しゃんとしたおばあさんを見送りながら
ふと あんな雰囲気のおばあちゃんになりたい と おもう。

こころに決めていることが ある。
おばあちゃんになれたなら じぶんのこと 『あたくし』 って 呼ぶのだ。

ながいきしたい。
このごろは とても ながいきしたい。