2005/12/15 (Thu)
プーシキン美術館展
東京上野でひらかれているプーシキン美術館展が 18日で終わってしまうので いそいそでかけた。
おもっていたよりも ずっと混雑していた。絵を観るのに並ばなくちゃならなくて とても疲れた。

お目当てのゴッホの『刑務所の中庭』は たいへんすばらしかった。
順路を なんども逆戻りして また並んで なんども観た。
ぐるぐるあるく運動をしている囚人たちが描かれていて そのうちのひとりは ゴッホにとてもよく似ている。
囚人たちがつくる影の向き うえの方から射しているひかりのようす
独特のタッチで描かれた壁や床のようす そばでみている看守のひとたちのようす
みればみるほどおもしろく 何時間みつめていても飽きないようにおもわれた。
そして なんといっても 2匹のしろい蝶々。
壁面に 壁の模様と見紛うほどのさりげなさで しろい点々が描かれていて
それは どうにも 2匹のしろい蝶々にみえるのだった。
俯いてあるいている囚人たちと 飛んでいる蝶々の 対比。

モネの『白い睡蓮』は 写真や絵はがきで目にしていたときには べつだん心動かされなかったのだったが
ほんものの絵を目の前にしたら 感動をおぼえずにはいられなかった。
丹念に塗り重ねられている絵の具のようすは 間近で観ると凄まじい迫力があったし
睡蓮の花の色彩の鮮やかさは じつにうっとりしちゃうかんじだった。

たくさんすてきな絵をみたけれど 点描で描かれている作品は とりわけこころに残った。
アンリ=エドモン・クロスの『自宅の周辺(家の近所)』 ポール・シニャックの『サン=トロペの松の木』。

マティスの作品は 幾度か観たことがあるが 観るたびに どのへんが素敵なのかしら と 首を傾げてしまう。
『金魚』は おおきな絵で 派手な色づかいは目をひいたが
ひろいカンヴァスは ひどく大雑把に塗られているかんじがあって やはりすきになれないとおもった。
あの大雑把なかんじを 大胆だとかなんとか誉めたらいいのかしら などと考えながらみていた。
『ブーローニュの森の小道』も『白い花瓶の花束』も ちっともおもしろくおもわれなかった。

ピカソの数点は 難解だった。
キュビスムの作品たちは 抽象的すぎる。
題名をみないと 何が描かれているのかわからないほどだった。
芸術っていうのは むつかしいものだなあ。

美術館でほとほと疲れたあとは おとなりの 上野動物園で まったり。
ちいさな頃に幾度か来たことがあるのだけれど 小学生のとき以来だったので みるものすべてが新鮮だった。

かわうその展示は 工夫されていた。
小屋のなかのプールから透明なほそいパイプが伸びていて 客の目の前に透明なおおきな水槽がある。
かわうそは たびたびパイプを通って こちら側の 水槽のなかにやってくる。
パイプも水槽も透明だから かわうそがどんなふうに泳ぐのか かわうその躰がどんなふうなのか よくわかる。

木曜日の午後2時半からは オウサマペンギンが園内をおさんぽするというイベントが行なわれている。
飼育係のみなさんに護られながらオウサマペンギンの一行がよちよち歩くようすを 間近でみられる。
おさんぽの途中には 幾度か休憩があり 客がぐるりと取り囲むと ペンギンたちはぴたりと止まって ちょっとやすむ。
やすんでいるあいだは きょろきょろあたりを見回したりしている。
ちょっとやすむと また歩き出す。一列に並んで 得意気に歩く。ちゃんと 道をおぼえているらしい。
おうちまで戻ると プールにばしゃりと飛び込み とても上手に すいすい泳ぎまわる。
嘴の 綺麗な色合い。おなかの ちょっと弛んだようす。すげい可愛らしくって 写真をぱちぱち撮った。

ヤギは こども動物園のなかにいて ちかくに行って自由に触れた。
たくさんいて みんなそれぞれ 名札をつけていたが おぼえきれなかった。
まるくてちいさな糞を 撒き散らしていて 飼育員さんは ずっとお掃除していた。
人懐こく顔を近づけてくるので 頭のあたりを 撫ぜてみた。毛は ごわごわしていた。

パンダは おなかをみせて あおむけで眠っているところだった。
トラは なにかの内臓のようなものを 弄びながら食べていた。
ライオンは 目つきがとても鋭かった。メスが1匹 ガラス一枚隔てたすぐそばまで来てくれた。
ゴリラは ぼろきれに包まって ふるえていた。鼻をほじっては 口にいれていた。
ホッキョクグマは みぎにひだりに ずっとうろうろしつづけていて はじっこに来ると ポーズを決めて 吠えた。
ラマは 耳をうしろに寝かせて 唾を飛ばす体勢だった。 (ときどき客に唾を飛ばすらしかった)
オオアリクイは 餌の容器にながい口を突っ込んで 必死に吸っていた。
(餌はアリじゃなくて ドッグフードやらなんやらを混ぜたもの)
しまうまは おなじ檻のなかにいるバーバリーシープを追いかけまわして いじわるしたり
草の束を口にくわえて運んでいって 隅っこで食べたりしていた。
ゾウは オスとメスだとおもわれる2頭が なかよく寄り添って おはなしちゅうだった。
冬なのに羽の抜けていない うつくしい孔雀。遠い国の かわったかたちの鳥たち。
絶滅が心配されている めずらしいハト。ゆっくりと首をうごかす フクロウ。
もこもこの レッサーパンダ。まるくなれない種類の アルマジロ。
華麗な身のこなしの ヤマネコ。歩き方がおもしろい タテガミオオカミ。
毛づくろいしている ニホンザルたち。樹のうえで眠っている ヤマアラシ。
うさぎや ねずみや ちいさないきものたち。ずっと暗いお部屋にいる 夜行性のいきものたち。
おおきな池に集っている いろんな水鳥たち。ピンク色の フラミンゴ。
夕方になって おうちのなかに入っちゃった カバや キリン。
ひろい園内を歩き回って たくさんの動物たちを みた。
時間が足りなくて 両生爬虫類館に入れなかったのが 心残り。

帰りにもういちどパンダを見にいったら パンダのリンリンは よるごはんを食べているところだった。
りんごを もしゃもしゃ齧りながら ときどきこちらをみてくれるのだった。