2006/09/07 (Thu)
 
宇都宮美術館 『VOCAに映し出された現在 いまいるところ / いまあるわたし』 という展覧会。
VOCA展は 1994年から 毎年上野で開催されている展覧会で 長ったらしいなまえで呼ぶと
『現代美術の展望 The Vision of Contemporary Art VOCA展 −新しい平面の作家たち』。
絵画を志すひとの 登竜門であるらしい。毎年 VOCA賞 VOCA奨励賞 というのが選ばれる。
今回の企画展は 過去12回の受賞作品 56点が ずらりと展示されているものだった。
いずれも力作揃いで 新鮮な感覚に満ち溢れていて じつに見応えのある展覧会だった。
会場を 3周4周 ぐるぐる巡った。作品に 近づいてみたり 遠ざかってみたり。

福田美蘭さんの 『STAINED GLASS』 は
高速道路の夜景を描いたものと シチューをお皿に盛っているようすを描いたもの
ふたつの絵が並んでいたのだったが ふたつともステンドグラス風に描かれていて 綺麗だった。

大岩オスカール幸男さんの 『エイズかんじゃ』  『ゼロセン・パイロット』 は
リヤカーに満載されている 機械や廃材やガラクタを うえからみて描いた絵で
近づいてみると ごみの山のようだけれど 遠ざかってみると ひとの顔のようにみえた。

石田徹也さんの描く人間は 独特だった。
表情の無い顔 何処をみているのか 死んでるみたいな瞳。
『捜索/前線』 2枚ならんでいる絵を 鑑賞した。

みやじけいこさんの作品は 写真をつかったもので 3枚で一組だった。
右側に 下着姿のおんなのひと 左側に 下着姿のおとこのひと
まんなかに 絡み合っている 2匹のかたつむり。
『そのための、時間。』 という タイトルが良かった。

フジイフランソワさんの 『景 海の向こうに何がある』 という絵は
海にゆれる海草や 空に浮かぶ月が描かれていたのだったが
月にはなぜだか ちょんまげの男が 突き刺さっている。
その手には うさぎが 耳を掴まれて ぶら下がっている。
海草のあたりは よく見ると 獣が居たり お花が咲いていたりする。
絵のあちこちに 詩のような 落書きのような 言葉が散りばめられている。
みればみるほど ふしぎな絵だった。

中ザワヒデキさんの 『19235枚の硬貨から成る41193円』 は 
天井くらいまであるおおきな布一面に 1円玉と 5円玉と 10円玉が びっしり貼りつけられている作品。
3種類の硬貨は きっちりまっすぐ並べられているわけではなく
僅かに揺れをもって 緩やかな曲線を描いて並べられていて
じっとみていると 海の波が 波打ち際につくる紋様にもみえてくる。
会場の照明を反射して きらきらひかるようすも うつくしかった。

ひときわ こころに深く入り込んでくる 印象的な作品があった。
HEARTBEAT DRAWING, SASAKIさんの 『TOGETHER, Heartbeat Drawing for 24 Hours no.1, no.2, no.3』。
背の高さほどの 両手をひろげたほどの おおきなアルミニウムの銀色の板が 3枚並んでいて
3枚ともぜんぶに あかい色のポスカで 心電図みたいな波線が 隙間無くびっしり描きこまれている。
作品のおとなりに 制作しているようすを撮った 写真が飾られていた。
佐々木さんは 自分の胸に手をあてて 心臓の鼓動をたしかめながら それに合わせて波形を描くのだった。
生きているということを たしかめながら つくりだされているようす。
とてもすてき。とてもすき。

HEARTBEAT DRAWING PROJECT
http://www.heartbeatdrawing.net/
2006/09/17 (Sun)
 
『新日曜美術館 悲しみのキャンバス 石田徹也の世界』 を 観た。
先週 予告をみたときから 気になっていた番組。
”31歳の若さで亡くなった” というようなナレーションを耳にして どきりとした。
このあいだ 宇都宮美術館でみた 死んでるみたいな瞳の絵。
あの絵を描いたひとは もうこの世にはいないのだということを 知った。

スタジオのゲストは おふたり。
授業で石田徹也さんの絵を紹介しているという大学教授と 大槻ケンヂさん。
大槻ケンヂさんは 著書 『のほほん人間革命』 『猫を背負って町を出ろ!』 を 手にしていた。
2冊とも 石田徹也さんの絵が 表紙なのだった。

番組は たいへん興味深いものだった。
石田徹也さんが10年ほどのあいだに描いた180点の絵画のうち いくつかを みた。
いちどみたら わすれられない絵。なにかを 訴えかけてくる絵。
遺された 創作ノートや 夢日記が 紹介されていた。
絵に込められたメッセージがわかったり 奇天烈な夢をみるひとなのだとわかったり した。
おともだちが 幾人かでてきて 石田徹也さんのおはなしを きかせてくれた。
やすいカップラーメンやパスタを買ってきて そればかり食べて過ごし
お金は絵の具を買うためにつかっていた 絵ばかり描いていた というおはなし。
絵を描くために 生きていたひと。
おともだちは 云うのだった。
『魂を削って絵を描いていたとおもいます』

さいごに描かれたという絵は 自画像だった。
机に向かっている 石田徹也さんだとおもわれる 虚ろな瞳の人物。
机のうえには しろいままの画用紙と からっぽの絵の具箱。
その絵に込められたメッセージをおもうと 胸が詰まった。